定光寺駅から愛岐トンネル群を見学する
愛岐トンネル群はこの地域の有志が集まり、中央西線の定光寺駅から古虎渓駅間の旧線トンネルを保存、維持する事を目的にNPO法人として「愛岐トンネル群保存再生委員会」が中心となって活動されています、この活動はトヨタ財団「地域社会プログラム」の助成金や市民公開に来て頂いた方々の募金によりナショナルトラスト運動として展開されています。
このNPO法人【愛岐トンネル群保存再生委員会】や廃線跡再生基金、市民公開の情報につきましては、保存再生委員会のホームページ
http://www.geocities.co.jp/ag_tunnel/index.htm
にアクセスしてご覧ください、10名以上で見学を希望されますと、水曜日と土曜日は公開して頂けるそうです。
さて本題に戻りまして、定光寺駅からの散策開始です。
定光寺駅ののり尻面には
定光寺駅沿いの土留は大半がコンクリート製の壁柱付土留になっていますが、切石を積み上げた土留も残っています。
山側に注意を注ぎながら歩いていると
新・愛岐トンネル手前の山側に旧線の橋脚が少し見えます、橋台はレンガ作りですが、橋桁はコンクリート製になっており現在はJRの保線用として使用されているみたいです。
愛岐トンネル群(玉野第三隧道~隠山第二隧道)の見学開始です、
保存再生委員会の方々が整備された登山口があります、木製の階段や土留で作った階段など見学者への労わりと、トンネル群への愛情が感じられます。(イヤァ~サカ、イヤァ~サカ、イヤァ~サカ~!!)
廃線跡にあがって定光寺駅方面を見ると
柵がありその先は原生の未開拓、未整備な状況が見て取れます。
保存再生委員会の有志が集まって整備された廃線跡は
下草や灌木などが伐採され軌道跡が顕わになっています。
当日、この公開に参加した方々の感想を聞いて疑問に思ったことがあります、確かにテレビで取り上げられ気軽に参加者された方が多かったように思いますが。
公式サイトを読んでみると
■持 参 品■ 飲料水・懐中電灯・運動靴・昼食の方は弁当など
■注意事項■ 会場周辺には駐車場が一切ありません。必ず電車をご利用下さい。
場内には危険な場所があります。ケガなどすべて自己責任の上で、ご参加下さい。
■そ の 他■ 再生現場を買取るナショナルトラスト運動展開中!
(現地で寄付金を受け付けています)
持参品の項目に懐中電灯と明記されているにもかかわらず、トンネル内に照明が無いとか、トンネル内の土砂を取り除けば良いのにとか、小石が多くて歩きにくい(ここは廃線跡で線路や枕木は無いもののバラストが残っている希少な廃線跡なのに)などの声が聞かれました。
テレビで放送されるさいには公式サイトに書かれている注意事項や通常のハイキングコースではなく【全国有数のこの貴重な産業遺産を後世に残したい】【先人たちが残した貴重な歴史遺産の保存と再活用】を周知してほしいです、確かにもみじや自然が綺麗なコースで老若男女の方々に見て頂きたいのですが、保存会の趣旨も大事にしてほしいです。
保存再生委員会の方々が整備された区間のスタートは
愛岐トンネル群3号と呼ばれている玉野第三隧道から始まります。 写真は南側の坑門で色々特徴があります。
この特徴を説明する前に
レンガや石造りのトンネルの坑門やアーチ橋、まんぽには各部位に呼び名が付いています、今後、本文上ではこの呼び名が頻発しますので、参考図を掲載しておきますが、この図面は私が調べた範囲なので、誤字、誤読、別名、正式名称があるかもしれません。
それでは私が気づいた玉野第三隧道の特徴を
このトンネルの坑門は四角錐の壁柱が強調された坑門(翼壁が無いために壁柱が目立つため)で笠石や帯石、要石が切石で表現されている揃った坑門です。
坑門の下部に目を落とすと
アーチ部はスプリングラインより下側(側壁)は江戸切りと言われる装飾が施された切石を積み上げた隅石になっておりスプリングラインより上側(アーチ)はレンガを5重に巻いた覆工の小口を装飾とした迫持ちになっています。 壁柱の下部も切石積みになっています。
このトンネルの最も変わった特徴は
先にも述べたように玉野第三隧道には翼壁がありません、そこで、トンネルの外壁を見てみると石積みの外壁がそそり立っています、一般的に隧道を作る場合は切り通し部分を作り、左右ののり面を石積みの翼壁と言われる土留で斜面崩壊からトンネルを守る構造になっているのですが、このトンネルは切り通しを作らず山の斜面を切り崩し、トンネル部分を延長するような形で持ち出す形で坑門が作られています。
玉野第三隧道の北側は
南側の構造と同じになっています。
玉野第三隧道から少し北へ歩くと
小さな橋梁跡があります、橋台はレンガ作りになっていますが、橋桁は撤去されて現存していません。
玉野4号隧道に向かって歩いてゆくと
少し大きな鉄橋跡にやってきます、現地では「竹林橋」と命名されていましたが、正式名称は?何だったのでしょうか。
東側の橋台を良く見てみると
オランダ積みのレンガで作られた橋台だと言うことが判ります、笠石や橋桁受けはコンクリートになっています。
この橋梁の山側には
現地で案内をしていらした方に教えて頂いたのですが、変わった物が写っています、植物なのですが・・・判りますか?
答えは
藤の根っこなのですが、茎の根元の空中から地面に向かって横に伸びているのです、とても不思議な光景と言えるのではないでしょうか? 次回、この愛岐トンネル群を訪問なさる場合に見てみてくださいね。
次に目の前に現れるのがトンネルの入口、玉野第4隧道です。
先ほどの玉野第3隧道とほぼ同じデザインになっています、笠石や帯石、要石、壁柱、迫持は同じデザインです。
でも、目を下に落とすと違いが有ります
坑門の側壁部分は石積みでは無くレンガのオランダ積みになっています、壁柱の下部も石積みでは無く迫持には珍しくレンガのオランダ積みになっており、礎段(躯体の重量を支持地盤や基礎へと伝達する部分)の最上部に切石で笠石を施してあります。
壁柱の裏側は
やはり玉野第3隧道と同じように石積みになっています。
トンネルの遥か上部に目をやると
レンガを積み上げた落石防護の土留壁が目に入ってきます、トンネル坑門の笠石より上部にレンガの構造物があるとは思いませんでした。
トンネル内部には
タイル製のキロポストの100m表示がトンネル内に残っています。
東側坑門は
西側の坑門と同じですが、こちらには翼壁がレンガ作りで取り付けてあります。
翼壁を見てみると
翼壁の端部は笠石が表現されており、その後ろには石積みの土留壁が施工されています。